米国が新型コロナウイルス禍で導入した大規模な金融緩和策を転換すれば、国際的な資金の流れが変わり日本経済に影響を及ぼす。
米金利の上昇で景気回復が遅れた日本から米国に資金が流れ、株価や為替が弱含む「日本売り」の様相が色濃くなる可能性があるからだ。コロナ禍からの回復が遅れ消費の持ち直しが鈍い日本では、米国とは対照的に金融緩和による景気の下支えがさらに長期化しそうだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演は景気支援策の継続に前向きな「ハト派寄り」(米メディア)の内容と受け止められ、27日のニューヨーク株式市場の主要株価指数は軒並み上昇した。
ただ、金融緩和によるカネ余りは株式や暗号資産(仮想通貨)などさまざまな資産価格を上昇させており、政策転換は?バブル?崩壊に結びつきかねない。パウエル氏の講演から量的金融緩和策が年内に縮小する可能性が読み取れ、FRBが示唆している2023年の利上げが来年に早まるとの見方もあり、明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは「株価が下がるだけでなく、景気拡大が終焉(しゅうえん)を迎えるリスクが出る」と警鐘を鳴らす。
ワクチン接種が先行した米欧に比べ、日本の景気回復の遅れは際立つ。4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率1・3%増と米国(6・6%増)やユーロ圏(8・3%増)に大きく水をあけられた。金融市場の目線は厳しく、日経平均株価は今月20日終値で2万7013円25銭と今年の最安値を更新した。
こうした「日本売り」は米国の金利上昇で拍車がかかりかねない。投資家は金利が高い米国で投資したほうが利益が上がりやすくなるため、円を売ってドルを買う円安に動く。円安は輸出産業の業績や株価の追い風になるが、原材料などの輸入価格上昇は国内の商品価格に転嫁され個人消費を下押しする懸念もはらむ。
このため年内の量的金融緩和策の縮小に動くFRBとは異なり、日本銀行は大量の国債買い入れなどで金利を抑える大規模金融緩和を続けざるを得ない。大和総研の久後(くご)翔太郎エコノミストは「黒田東彦総裁は金融緩和の出口戦略を『時期尚早』と言い続けている。(令和5年4月までの)任期中には難しい」とみる。(高久清史)
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