昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第30回。
なぜ電話しか受け付けない?
日本の役所や病院は、メールでの問い合わせには積極的に対応してくれません。電話やFAXよりメールのほうが優れた点が多いにもかかわらずです。単純に、事務処理体制の遅れとしか考えられません。これは、日本の生産性が低い基本的な理由です。
菅内閣は行政のデジタル化を促進するとしていますが、正式な申請手続きのデジタル化だけでなく、日常連絡のデジタル化を是非推進してほしいものです。
役所や病院の問い合わせ先として、電話番号はさまざまなところに表示してありますが、メールアドレスが書いてあるのをあまり見たことがありません。
電話をしても話し中。やっと電話がつながっても、こちらからデータを送る必要がある場合、「FAXで送れ」と言われることが少なくありません。しかし、FAX機など、とうの昔に廃棄処分してしまったので、途方に暮れてしまいます。
コンビニエンスストアに行けばFAXを送れるということは、私も知っています。しかし、新型コロナの時代には、多くの人が触っているボタンには触れたくないのです。
また、コンビニエンスストアでの受信はできないことが多いので、「FAXで送るから受信せよ」と言われた場合には、お手あげです。
メールのほうが、電話やFAXより優れた点が多い連絡手段であることは、間違いありません。素早く送れます。添付ファイルで、PDFやスプレッドシートや写真なども送れます。
受ける場合も、こちらの望む時間に見ることができるし、記録をなくすことがありません。
電話だと、いつ返事がくるかわかりません。こちらの都合の悪い時間に返事が来ることもあります。
ほかにも、電話・FAXで不便なことは、山ほどあります。
役所や病院がメールを受け付けてくれない理由は、わからなくもありません。
仮に役所や病院がメールアドレスを公開して一般のメールを受け付けたら、迷惑メールなどが押し寄せて混乱するだろうとは想像できます。
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