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英オックスフォード大の新型コロナ・ワクチン、有効率70% 安価で保管しやすい利点 - BBCニュース

ジェイムズ・ギャラガー、BBC健康・科学担当編集委員

Vaccine trial at Oxford University

英オックスフォード大学は23日、英製薬会社アストラゼネカと共同開発中の新型コロナウイルス・ワクチンについて、大規模な治験の結果、70%の人が感染症COVID-19を発症しないことが確認されたと発表した。

新型コロナウイルスのワクチン開発ではこれまでに、米モデルナと米ファイザーが有効率90%以上の結果を発表している。

ただし、オックスフォードとアストラゼネカのワクチンははるかに安価で、普通の冷蔵庫(摂氏2~8度)で保管できるため、世界各地に幅広く普及しやすいことが利点と期待されている。

このため、規制当局が承認すれば、世界的なパンデミック対策において、きわめて重要な役割を果たすことになる。

さらに、接種するワクチンの量を調整することで、有効率が90%に達することもあるという実験結果が得られている。

イギリス政府はすでに、オックスフォードのワクチン1億回分を予約してある。これによって、5000万人が免疫を獲得できることになる。

ボリス・ジョンソン英首相は、「臨床試験でオックスフォードのワクチンがこれほど効果的だったというのは、実に前向きな知らせだ」とコメント。「今後さらに安全性を確認することになるが、それでも素晴らしい結果だ」と述べた。

新しいワクチン開発には通常10年はかかるが、このワクチンは約10カ月という猛スピードで開発された。

開発研究を主導するサラ・ギルバート教授は治験結果の発表について、「ウイルスによる大惨事を終わらせるためワクチンが使えるようになる、その時に向けて、また一歩近づいた」と述べた。

臨床試験の結果は

ワクチンを2回接種されたうち、COVID-19を発症した人は30人。偽薬の接種を受けた人は101人が発症した。

研究チームによると、70.4%の有効率が確認されたという。また、発症しても、ワクチン接種を受けた人の重症化はなかったという。

ワクチンの量が多い注射を2度受けた人への有効率は62%だった。これに対して、最初にワクチン量を半分に減らした後に2度目はその倍量を接種すると、有効率は90%に上がった。なぜこの違いが出たのかはまだ不明だという。

治験を主導するアンドリュー・ポラード教授はBBCに、「この結果に本当に喜んでいる」と話した。接種量を減らすと有効率が90%に上がったことも「興味深い」と教授は述べ、「供給できる回数が増えることになる」と期待感を示した。

1回目は少量、2回目は多量の組み合わせで接種した被験者の間では、無症状の陽性者が出る割合も少なかったため、「これで人から人への感染を減らし、ウイルスの広がりを食い止められるかもしれない」とポラード教授は話した。

Oxford Vaccine

イギリスではすでに400万回分が使用可能な状態にあり、さらに今後は9600万回分が供給される。規制当局の承認手続きは向こう数週間に予定されている。

全国的なワクチン接種事業は、まずは介護施設の入居者と職員から始まり、続いて医療従事者と80歳以上の人たちに提供される。イギリスでは今年6月までの感染第1波で、COVID-19による死者が特に介護施設に集中した。

このワクチンの仕組みは

このワクチンは、チンパンジーがかかる風邪ウイルスを遺伝子操作したもの。人間に接種してもこの風邪にかからないよう無害化されている。

ワクチンは「スパイクたんぱく質」と呼ばれる、新型コロナウイルスの一部の「設計図」を含む。これを体内に接種することで、体内はスパイクたんぱく質を生成し始める。すると人体の免疫系がこれを攻撃することを学習し、やがて実際に新型コロナウイルスが体内に入ったときには、同じようにこれを攻撃できるようになる。

結果は期待はずれなのか?

ファイザーとモデルナの両者が共に有効率95%というワクチンを開発しているのに対して、オックスフォードとアストラゼネカのワクチンが有効率70%というのは、期待はずれだと受け止める人もいるだろう。

ただし、わずか1カ月前には有効率50%なら大成功だと思われていたし、70%というのは通常のインフルエンザ・ワクチンよりはるかに高い数字だ。

オックスフォードとアストラゼネカのこのワクチンは、COVID-19から人の命を救ってくれるものだ。それに変わりはない。

加えて、実際の運用において決定的とも言える利点がある。マイナス70度やマイナス20度など超低温保管を必要とするファイザーとビオンテック、あるいはモデルナのワクチンと異なり、これは一般的な冷蔵庫の温度で保管できる。

アストラゼネカは世界各地に30億回分を供給する予定(編集部注:日本政府はアストラゼネカと1億2000万回分の供給で合意済み)。

保管管理しやすいことに加え、薬価は1回分が約3ポンド(約420円)で、ファイザーの約2000円やモデルナの3500~4000円より、はるかに安い。

これで暮らしはどう変わるのか

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私たちは今年ずっと、ワクチンを待ち続けてきた。各地でロックダウンや行動制限に耐えてきたのは、ワクチン開発の時間を稼ぐためだった。

しかし、イギリスで数千万人、世界中で数十億人に必要な量のワクチンを製造するのは、とてつもない巨大な取り組みだ。

私たちの暮らしは明日いきなり元に戻ったりはしない。けれども、特に感染リスクの高い人たちが守れるようになるだけでも、状況は劇的に改善する。

イギリスのマット・ハンコック保健相はBBC番組「ブレックファスト」に対して、来年夏までには「平常どおりに近い」状態に戻っているだろうと述べた。ただし、「ワクチンを広く供給できるようになるまでは、全員がお互いのことを考えなくてはならない」と指摘した。

専門家の反応は

治験に関わっていないオックスフォード大学のピーター・ホービー教授(感染症専門)は、「とても喜ばしい知らせだ。トンネルの出口がはっきり見えるようになった。オックスフォードのワクチン接種を受けた人で、COVID-19で入院したり亡くなったりする人は出なかった」と述べた。

リーズ大学のスティーヴン・グリフィン教授(ウイルス学専門)は、「これもまた素晴らしい知らせで、非常にわくわくする。世界中に広く供給できる可能性が高く、公衆衛生に大いに貢献しそうだ」と歓迎した。

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