急増したコロナウイルス感染者がいったん収まった中、東京都がようやく”野戦病院”の拡充に動き出した。自宅療養中に重症化したり亡くなったりする患者が増える中、医療現場からは臨時医療施設を求める声が上がっていた。 【図表】コロナに対応した東京都の臨時医療施設一覧 9月11日、「船の科学館」(品川区)の敷地内に開設されていたプレハブ施設で、コロナ患者への治療が始まった。医師の往診による診察で、酸素投与や点滴を行う。往診で治療を実施する宿泊療養施設は、都内で初となる。
プレハブ施設(150床)のうち37床で、病院で症状が改善しても退院できない回復期の患者を受け入れる。病床逼迫の一因となっている経過観察中の患者には臨時施設に転院してもらい、重症・中等症病床を確保することが狙いだ。 ■病床不足に臨時施設は不可欠 「8月中に運用が始まる予定だったが、都の調整が難航していた」 そう話すのはこの施設を開設した日本財団の担当者だ。日本財団が、船の科学館の駐車場にプレハブ施設を設置したのは、2020年7月。10月には東京都に引き渡され、軽症者を受け入れる宿泊療養施設として運用されていた。
感染者が急増した今年8月、周辺の医療機関からの要望でプレハブ施設の一部を医療施設として運用する話が持ち上がった。 感染者は減少しているものの、重症者用の病床使用率(厚生労働省の基準)はいまだに90%を超えておりまったく余裕がない。それにより、重症用以外の病床も不足する事態を招いている。 中等症・軽症患者の受け入れ医療機関である「東京曳舟病院」(墨田区)では、コロナ患者向けに最大18床を確保しているが、13~15床ほどの稼働が限界だという。その理由について、三浦邦久副院長はこう話す。
「重症化しても、重症者に対応する病院が満床状態のため転送できない。重症者も自院で治療し続けるしかなく、その分人手がかかる。今いる患者が重症化したときにも備えると、余力を残しておかなければならない」 内閣官房の報道発表資料によると、8月30日時点で開設されていた臨時医療施設は、都内で3カ所。そのうち、「都民の城」(渋谷区)と「品川プリンスホテル」(港区)は稼働していたが、運用が始まっていないのは同施設のみだった。
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