■「反対の票を投じる予定」
スーパーマーケット業界に激震が走っている。関東圏で「OKストア」を展開するオーケー株式会社が関西の老舗「関西スーパー」を運営する関西スーパーマーケットに対して買収提案をすると発表したからだ。
直接の発端は8月31日、関西スーパーが発表したリリースだった。オーケーが6月に提案していた関西スーパーとの資本業務提携案について、特別委員会を設置して検討をしたところ、今後の事業の成長性に鑑みてオーケーではなく、阪急阪神百貨店を営むエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の傘下に入る決定をくだしたという内容だ。H2Oとの経営統合案について、10月29日に開く臨時株主総会に諮るとした。
これにオーケーが反発した。関西スーパーのリリースからわずか3日後の9月3日、オーケーがぶち上げたのは関西スーパーの買収案だった。6月に提案していた資本業務提携について、「(特別委員会が間に入ることで)関西スーパー様との実質的な協議の場は設けられませんでした」「関西スーパー様の株主利益の最大化の観点から公正に比較検討頂けたのか、懸念しております」と不快感を示した上で、10月29日の臨時株主総会では、「反対の票を投じる予定です」と宣言した。
■H2Oが10%強の出資
臨時株主総会でH2O案が出席株主の3分の2以上の賛成を得られなかった場合、オーケーは「関西スーパーの株主はオーケーに買収されることを選択した」と見なし、TOB(株式公開買い付け)を開始する。買取価格は1株2250円で、リリース前日9月2日終値(1374円)に6割のプレミアムを付けた、上場来最高値のプライシングだ。
そもそもオーケーが関西スーパーの臨時株主総会に出席できるのは、同社株7.69%強を保有する第3位の大株主だからだ。オーケー、関西スーパー、H2Oの微妙な三角関係をひも解くには、少し過去に遡る必要がある。
オーケーが関西スーパーに初めて出資したのは2016年のこと。7%分の出資をしたオーケーは、当然のごとく関西スーパーとの資本業務提携を望んだ。ところが関西スーパーはオーケーの提案に対し、いっこうに首を縦には振らなかった。それどころか同じ関西を地盤とするH2Oに10%強の出資をしてもらい、第1位の筆頭株主になってもらう。
関西に乗り込もうとするオーケーの試みを、関西スーパーとH2Oがスクラムを組んで阻止するような構図だ。
それから5年間、3社がじっと顔を見合わせるような状態が続いたが、そこへ一石を投じたのが今年6月のオーケーによる資本業務提携の提案だった。コロナ後の事業環境を見据えた業界再編への布石だったが、その後の経緯は上述した通りである。
■「オーケーらしくないのではないか」
焦点は10月29日の臨時株主総会。ここで関西スーパーの株主がどのような判断をくだすかに注目が集まっている。株主にとって判断が難しいのは、H2O案とオーケー案を単純比較できないことだ。
オーケー案は1株2250円で全株を買い取り、関西スーパーを完全子会社化(非上場化)する。それに対してH2O案はややこしい。H2Oの100%子会社であるイズミヤ、阪急オアシスの株式と関西スーパーの株式を交換する手法で、関西スーパーの上場は維持される。
H2Oとの経営統合によって業績を上向かせ、配当が増えることに期待するのか、それとも、そこには期待せず2250円でオーケーに買い取ってもらうか――。関西スーパーの株主はどちらかの案を選択することになる。
H2O案は複雑でわかりにくいため、経済メディアの論調は、「関西スーパーは株主に対してもっと丁寧にわかりやすく説明する必要がある」という方向へ流れている。だが、オーケーの自社株主への説明も十分とは言えない。
「オーケーらしくないのではないか」
という声が株主から上がっているのだ。
■非上場企業を貫いているが
オーケーの株主の一人は言う。
「オーケーの株を買ったのは『客や取引先、従業員とともに、ゆっくり着実に成長していく』という経営理念に共鳴したからです。(関西スーパーへの買収提案は)コロナ後に向けた布石なのだと思いますが、創業理念からは随分かけ離れた行動ではないでしょうか」
オーケーが自社ホームページに載せている「オーケーの歩み」には、オーケーという会社の柱となるような考え方が示されている。
「かねてよりオーケーの株式は、お客様と、お取引先様と、社員が保有し、関係者みんなで良い会社に育てて、その成果をみんなで分かち合う、株価が経常利益と連動するような仕組みにすれば、経常利益が増え続ける限り株価が下がることはない、『こんな形が理想だなぁ』と考えておりました」
これはオーケー創業者で現会長の飯田勧氏が記したもの。飯田氏の兄弟には居酒屋チェーン「天狗」を運営するテンアライド創業者の飯田保氏、警備会社セコム創業者の飯田亮氏らがおり、言わずと知れた実業家兄弟の一人だ。
オーケーでは過去、店舗のサービスカウンターで客向けに種類株を発行し、客にも株を買ってもらう(出資してもらう)ことで会社を共に育てていくという形を追及してきた。上場すれば株式市場で一気に資金調達が叶うが、あえてそういう方法は採らず、現在も上場しない非上場企業を貫いている。
■正直な説明で積み上げた信頼関係
そんなオーケーの店舗の特徴は「オネスト(正直)カード」。例えばいちごの商品棚には「最盛期に比べると甘味が薄くおいしくありません。コンデンスミルクか、ジャムなどをかけてお召し上がりくださいませ」と表示し、なすの商品棚には「天候の影響により各産地で生育不足、品質不良となっております。回復まで出来れば購入を見合わせてください」と、実情を正直に説明するのだ。
安くないのに「大安売り」「特売」と謳う食品スーパーが珍しくない中、正直に説明をすることで顧客(株主)との信頼関係を積み上げ、売上を伸ばしてきたのがオーケースタイル。2021年3月期(売上高5082億円)にかけて34期連続増収という驚異的な実績の要因は、そうした姿勢が株主から支持されてきたことが大きい。
だが、それだけに今回の買収提案は株主の間で物議を醸している。別の株主はこう怒りをぶちまける。
「オーケー経営陣の言動を見ていると、本当に自社株主のことを考えているのかわからなくなりました。自分たちの期待通りに動いてくれない関西スーパーにしびれをきらし、感情的な買収攻勢に走っているのが透けて見えるからです。現に、今回の買収提案はほとんど飯田会長と二宮涼太郎社長だけで決め、他の役員は蚊帳の外に置かれていると聞きます。買収に失敗してオーケーの株価が下がれば、その被害を受けるのは株主ですよ。みんなで良い会社に育てようなどと耳心地の良いことを言いながら、結局はトップの独断によって株主や従業員が翻弄されているじゃないですか」
また、関西スーパー関係者はこんな話を明かす。
「オーケーの二宮社長はメディアのインタビューに、『関西スーパーのブランドは変えない』と話していますが、とんでもない。当初オーケー側は『買収したら関西スーパーの看板は下ろしてもらう』という趣旨のことをはっきり言っていました。表で言っていることと裏でやっていることが違いすぎますよ」。
運命の10月29日まで1ヵ月以上ある。関西スーパーのみならずオーケーの経営陣も、株主、顧客、取引先、社員らが納得のいく説明をした方がよいのではないか。
デイリー新潮取材班
2021年9月24日 掲載
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