スマホのアプリなどで単発の仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」という働き方がコロナ下で急拡大している。働く時間などが自由な半面、働き手の立場の弱さが課題だ。英国では今年、代表格の配車大手ウーバーが運転手の処遇を見直した。潮流を変えるきっかけとなるか。
わけ・しんや 1979年生まれ。ロンドンにある欧州総局で経済取材を担当。週末はサッカーの試合に行く子どもの運転手。
8月上旬、出張先からロンドンに戻り、空港の玄関を出たのは夜10時近かった。電車に乗ろうと思ったが、自宅まで地下鉄を乗り継ぐと2時間弱かかる。駅から20分ほど荷物を引いて歩くが、やや不安な時間だ。
考えた末、スマートフォンを取り出し、開いたのは「Uber(ウーバー)」のアプリ。タクシーより安価に送迎を頼める配車サービスだ。英国では多くの人が利用している。
アプリで目的地を入力すると、運賃が約30ポンド(約4500円)と提示された。この金額は需給などで変動するが、事前にわかるのはありがたい。依頼ボタンを押し、近くにいる運転手との「マッチング」が始まる。5分ほどで待ち合わせ場所の駐車場に到着した車に乗り込み、家路へ。40分ほどのドライブだ。
ルーマニア出身だという運転手のミーハイさんが、運転手用のアプリ画面を見せてくれた。私を運ぶ仕事を請け負った金額は、24ポンドと表示されている。差額の6ポンドはウーバーに入る。
働き手と、労働力を必要としている人や企業を仲介し、ギグ・エコノミーを支えるウーバーのような事業者は「プラットフォーマー」と呼ばれ、世界で増えている。ギグ・エコノミーはプラットフォーマーからネットやアプリを介して単発・短期の仕事を請け負う働き方で、英語のギグは、音楽家が開く単発のライブ演奏から来ている。マスターカードは2019年のリポートで、ギグ・エコノミーの市場規模が23年には4552億ドル(約50兆円)と、18年の推定2040億ドル(約22.4兆円)の2倍以上に拡大すると見込んだ。
ギグ・エコノミーの働き手に…
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