東京都の50代女性は怒っている。働き手を守るはずのセーフティーネット(安全網)の線引きにだ。
飲食店のアルバイトで週5日、働いてきた。コロナ禍で休業になり、シフトが減った。
子ども2人を育てるシングルマザー。収入が減るのは困る。さらにショックだったのは、雇用保険を含む社会保険の適用から外れたことだ。「週20時間以上働く」という条件を満たせなくなった。
失業給付を出したり、雇用を守る企業を支えたりする「雇用保険」が揺らいでいます。コロナ禍で失業率を抑える一定の役割を果たしたものの、安全網としての機能にほころびが目立ち、財政は火の車です。持続可能で誰もが頼れる制度に立て直せるでしょうか。
今年5月、2カ月連続で月100時間働けば社会保険などに加入できると会社から説明された。でも実際にシフトを入れようとすると、上司は「経営が厳しく、保険には加入させられない」と言った。シフトは申し込んだより減らされた。雇用保険料は働き手と会社が折半で負担するから嫌がられたと思っている。
女性は訴える。「会社の意向で働き方を制限されるだけでなく、保険加入まで左右されるのはおかしい」
コロナ禍では飲食・宿泊業、イベント業などが休業を迫られた。これらの業種には、この女性のようなシフト制労働者に加え、もともと雇用保険の適用から外れているフリーランス、学生バイトも多い。
政府はこうした人々を念頭に「コロナ特例」として、雇用保険のお金を使う事業の対象を広げた。
休業手当を払って雇用を守った企業を支援する「雇用調整助成金」(雇調金)は、雇用保険が適用されない従業員も対象にした。また、勤め先から休業手当が出なかった働き手が国に直接申請し、休業前の賃金の一定割合を受け取れる「休業支援金」も創設した。安全網から漏れる人を減らすねらいだ。
ただコロナ禍が長引いた結果、昨年春から今年9月下旬までの支給決定が、雇調金は4兆5千億円近くに達した。休業支援金も1800億円を突破。雇用保険の財源だけでまかなえず、すでに1兆円を上回る税金が投入されている。
この状況を踏まえ、厚生労働省の審議会が、来年度の雇用保険料率の引き上げ幅を含めた財源の確保策を議論中だ。一方、付け焼き刃ではなく抜本的な制度の見直しに取り組むべきだという意見もある。
ときに働き手の意思と関係なく「線引き」される課題をどうすればよいのか。記事の後半では「3段階」といわれる働き手の安全網について識者にも聞いて改善のヒントを探ります。
雇用保険制度に詳しい名古屋…
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