イエレン米財務長官は、政府が支出を拡大し経済がそれに応じる形で成長を加速させる中で、金利は上昇する可能性が高いとの見解を示した。長官の発言を受けて金融市場では動揺が広がったが、エコノミストの間では自明のことで特に驚くような発言ではないと捉えられた。
イエレン長官は3日収録されたアトランティック誌とのインタビューで、「米経済が過熱しないよう確実を期するには、金利はやや上昇せざるを得ないかもしれない」と発言。「金利の極めて小幅な上昇につながる可能性がある」と付け加えた。インタビューは4日にウェブサイトで公開された。
極めて異例な状況だったトランプ前政権時を除き、米金融当局の独立性という観点から政権のメンバーが金利の見通しについて発言するのはまれだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の前議長でもあるイエレン長官が今回のインタビューで言及した金利とは、金融当局の政策金利ではなく、市場金利のことを指していた可能性の方が高いと、FRBウォッチャーらは指摘した。
イエレン長官の発言が伝わった後、株式相場は下げを拡大。米国債利回りは下げを縮め、ドルはこの日の高値を付けた。
元FRBエコノミストで、現在はコーナーストーン・マクロのパートナー、ロベルト・ペルリ氏は「イエレン長官が金融政策について発言していたとは考えていない」とし、「中長期金利について話していたのではないかと私は解釈している。そうであれば、特に驚くような発言ではない」と述べた。
ただ長官の発言を巡ってはホワイトハウスのサキ報道官の定例会見でも話題となった。報道官は、イエレン長官はFRBの独立性を「当然理解している」と述べた。
サキ報道官はさらに、バイデン大統領とイエレン長官は意見が一致しており、「われわれはインフレリスクを極めて真剣に捉えている」と説明した。
イエレン長官はインタビューでバイデン大統領が提案する巨額の支出計画について、金利が上昇したとしても経済にとって最終的にはプラスになると強調。そうした支出は「米経済が高い競争力と生産力を維持する上で必要な投資であり、それにより米経済の成長は加速すると考えている」と述べた。
バイデン政権は3月に成立した1兆9000億ドル(約208兆円)規模の経済対策に続き、計4兆ドル余りに上るインフラ計画と社会保障拡充計画を提案している。
イエレン長官は「この計画には経済に対する需要効果があるが、さらに重要なのは大きな供給効果をもたらすという点だ」と語った。
原題: Yellen Ruffles Markets With Comment on Prospect for Higher Rates(抜粋)
(ホワイトハウス報道官とエコノミストの発言を追加し、更新します)
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