関謙次
ふるさと納税制度による名古屋市の財源流出が、初めて100億円を超える。総務省が7月に発表した調査結果によると、2021年度(課税年度)の市税の減収額は106億円に達し、横浜市の176億円に次いで多い見込みだ。名古屋市は「返礼品競争」に本格的に参入し、流出に歯止めをかける方針だ。
ふるさと納税は、納税者が自分の住んでいない自治体に寄付をすると、寄付額のうち2千円を超える分が住民税などから控除される制度。実質2千円で肉や海産物といった返礼品がもらえる。20年度はコロナ禍の「巣ごもり消費」を背景に返礼品を求める人が増えたとみられ、全国の自治体が受け入れた寄付額は過去最高の6724億円と前年度を4割上回った。
寄付は自治体の財源になる半面、他の自治体に寄付する納税者が多い自治体は、その分だけ財源が減る。総務省の集計によると、名古屋市では20年1~12月、前年同期間より4万人多い約15万人が他自治体に寄付した。このため21年度の市民税の控除額(減収額)は前年度の85億円からさらに膨らみ、過去最高を更新する見通しだ。
減収額の75%は国が補う仕組みとはいえ、市は「看過できない状況」(財政担当者)として返礼品競争に加わる。これまで犬や猫の殺処分を防ぐための寄付など返礼品を伴わないメニューが中心だったが、大幅に品目を増やす。コロナ禍で打撃を受ける市内企業の支援にもつなげるという。
市は8月中、市内に本社や支社、事業所、工場などがある法人・団体または個人事業主を対象に、返礼品の募集をしている。総務省の基準に沿う商品やサービスなどの「地場産品」を募っている。条件をクリアした品目は市が買い取り、返礼品にあてる。
集まった返礼品は、ふるさと納税のポータルサイトに10月中旬に掲載し、寄付の受け付けも始める。このスタートに向けた募集は8月31日で締め切るが、その後も随時受け付ける。担当者は「地場産品の提供は市の魅力発信にもつながる。多くの企業に協力してほしい」と呼びかけている。
詳細は市の募集サイト(https://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000143513.html)か、委託事業者のJTB名古屋事業部・名古屋市ふるさと納税担当(052・446・7135、メールnagoyafurusato@jtb.com)。(関謙次)
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