台湾との公的交流をやめるよう中国に迫られる各国政府は、世界がどれほど台湾に依存しているかを認識しつつある。
自動車業界で最近広がった半導体不足を巡る懸念は、台湾の重要性を浮き彫りにした。特に、半導体ファウンドリー(受託生産)世界一で米アップルがスマートフォン向けの半導体を頼る台湾積体電路製造( TSMC)の存在は大きい。
台湾の半導体メーカー、最善尽くすと表明-自動車向け供給不足対応で
日欧米の自動車メーカーはそれぞれの政府に助けを求め、台湾とTSMCは対応を 要請された。事情に詳しいフランス当局者によれば、マクロン仏大統領とドイツのメルケル首相は昨年、半導体不足の可能性について話し合い、欧州独自の半導体業界の育成を後押しする必要性で一致した。
バイデン米政権の発足後も米中の緊張関係が和らぐ公算は小さいとみられる中で、半導体産業をリードする台湾は世界的サプライチェーンの地政学的な要衝「チョークポイント」となっている。
ベルリンのシンクタンクSNVの テクノロジー・地政学プロジェクト担当ディレクター、ヤンペーター・クラインハンス氏は米国が発展させた半導体の委託生産モデルの主導権を握る台湾について、故障があれば「半導体のバリューチェーン全体に影響する最重要の単一障害点である可能性」を指摘する。
半導体サプライチェーンの重要部分を占めるのは台湾だけではない。米国は半導体設計と電子ソフトウエアツールで依然として圧倒的なポジションにあるほか、オランダの ASMLホールディングは最先端の半導体を生み出す製造装置メーカーとして欠かせない。日本は機器や化学製品、ウエハーの供給で鍵を握る。
その日本もまた、TSMC施設の国内誘致を図る。同社は東京都内に先進半導体パッケージング施設を建設する合弁事業を経済産業省と設立すると1月に報じられた。
同省商務情報政策局の西川和見・情報産業課長はTSMCの優位は一段と強まっているとし、そうした状況への対応方法を半導体業界の誰もが考える必要があるとの認識を示す。
台湾を自国領土の一部と見なす中国は昨年打ち出した 5カ年計画で、半導体など重要なテクノロジー業界への支援を進めつつある。米政府が一部中国企業への禁輸措置を講じていることから、中国政府が半導体の知的財産(IP)を盗む手段に打って出る観測も浮上しており、そうなれば最も狙われることになるのが台湾だろう。
台湾のサイバーセキュリティー会社 チームT5は、米国の対中輸出規制強化に呼応するかのように台湾の半導体業界に対するサイバー攻撃が着実に増えたと報告している。
だがより大きな懸念は、台湾の独立を阻止するためなら武力行使も辞さないと 威嚇し続ける中国が実際にそうした行動に出た場合、TSMCの半導体工場に被害が及ぶ可能性だ。
仏 モンテーニュ研究所でアジアプログラムディレクターを務めるマシュー・ドゥシャテル氏は、台湾は「中国の安全保障政策における重心」であり、世界の半導体サプライチェーンの中で「巨大な戦略的価値」を持つと説明。これが中国を行動に走らせない理由になるとした。また、仮に中国人民解放軍が侵攻し台湾軍が圧倒されたとしても、台湾側が「施設をそのままにしておく理由はない」とし、世界最先端の半導体工場を守ることは「誰にとっても利益」だと論じる。
在中国欧州連合(EU)商業会議所(中国欧盟商会)のヨルグ・ワトケ会頭はブルームバーグテレビジョンで、地政学的要因で半導体不足が頻発する可能性を指摘。「輸出管理や政府の介入により、生産能力の問題だけではない理由でサプライチェーンが突然混乱する事態に発展するだろう」との認識を示し、「今から備えた方がいい」と呼び掛けた。
原題: The World Is Dangerously Dependent on Taiwan for Semiconductors(抜粋)
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