[パリ/ミラノ 26日 ロイター] - 仏高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、今月買収を完了した米宝飾品大手ティファニーの多岐にわたる品ぞろえを抜本的に見直す構えだ。これまでよりも金や高価な宝石などの高級商品に重点を置き、ブレスレットなどの銀製品についても高級路線にシフトしていくとみられる。
ティファニーの経営内部を知る2人を含む関係者6人によると、LVMHはティファニー店舗の外装を刷新し、欧州・アジア展開を強化する可能性も高い。
ティファニーは世界に320店舗を構え、その3分の1以上が米国内にある。関係者2人は、一部の店舗は時代遅れでみすぼらしく、改装の必要があると語った。
このうち1人は「LVMHに買収されたことで、ティファニーは商品の品ぞろえと世界中の店舗に大規模投資を行うとともに、それが中期的に実を結ぶのを待つだけの時間と資金が得られる」と話した。
<きらびやかな装飾品に焦点>
LVMHが新たな経営チームを送り込んだ翌日の1月8日、新経営陣らはニューヨークのホールからティファニーの従業員1万4000人に向け、高級路線のきらびやかな宝飾品に焦点を絞る当初計画を披露した。出席者の1人が明らかにした。
LVMHの考え方に詳しい別の関係者によると、同社はティファニーの腕時計の品ぞろえ拡充も検討している。
スイスの高級ブランド大手リシュモン傘下のカルティエやヴァン・クリーフ&アーペル、そしてLVMH傘下のブルガリといった競合他社に比べ、ティファニーの商品は150ドル(約1900円)の銀製ペンダントから数千万ドルのダイヤモンドのネックレスに至るまで、その価格帯の幅広さに特徴がある。
銀商品の粗利ざやは90%前後と高いうえ、初めて宝飾品に手を出す若者や、あまり財力のない消費者にはもってこいだ。しかし専門家によると、トップブランドとして唯一無二の「オーラ」を醸し出すには、10万ドル以上する中・高級商品も取りそろえる必要がある。
<「注文の多い」新オーナーを懸念する声も>
フランスきっての大富豪、ベルナール・アルノーLVMH会長は8日のホールでの会合で従業員向けにビデオメッセージを届け、時間がかかってもティファニーの地位を引き上げたいと述べた。
出席者の1人によると、アルノー氏は「短期的な制約よりも、ティファニーが長期的に目指す理想を優先する」と発言。ティファニーの象徴である「ティファニーブルー」の包装箱を振りかざしながら、これからはLVMHの豊富な資金力をあてにできると強調した。
世界最大の高級ブランドグループであるLVMHは、コロナ禍で空港店舗の販売が落ち込んだが、傘下の幾つかの最大級ブランドは堅調を保っている。
それでもティファニー従業員の一部には心配ムードがある。
欧州店舗のある幹部は、LVMHのおかげで洗練度が高まり、卓越したブランドになると予想する一方、「注文の多い」事業オーナーというLVMHの定評が気掛かりだと話す。
「あまりうまくいっていない店舗は、すぐに閉鎖されてしまう」
アルノー氏は、自社店舗を抜き打ち訪問することで知られる。2019年末に買収計画が発表された後には、韓国ソウルのティファニー店舗を訪れ、清掃用具が出しっ放しだ、商品に「品切れ」と書かれたピンクの付せんが貼ってある、などと細かい不手際を指摘した。関係者が明らかにした。
LVMHとティファニーはコメントを控えた。
<ブランド統合のシナジーを期待>
LVMHとティファニーは買収を巡って訴訟合戦を繰り広げた末、買収価格をわずかに引き下げて総額158億ドルとすることで最終合意した。その後、アルノー氏はティファニー側をなだめる発言をしている。
ニューヨークの8日の会合では、ここ数カ月にティファニーが見せた底力はLVMHの期待を上回ったと持ち上げた。出席者の1人が明らかにした。LVMHは以前、ティファニーはコロナ禍中の経営がお粗末で、見通しは「悲惨」だとしていた。
ティファニーは直近の四半期、オンライン販売や中国事業でいくらか失地を挽回した。コロナ禍の間、宝飾品業界は全般に他の業界より底堅く推移している。ここ数年、宝飾品は高級品セクターの中で最も成長が著しい分野のひとつだ。
ティファニーは競合他社に比べ、アジア太平洋地域での事業展開が小さい。同地域は高級品販売のけん引役で、19年には世界の販売総額44億ドルの28%を占めた。これに対し、欧州の割合は11%だ。
11年にLVMH傘下に入ったイタリアの高級品ブランド、ブルガリのジャンクリストフ・ババン最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューで、ショッピングモール経営者と店舗の交渉をする時も、空港と広告掲示板への掲載で交渉する時も、数十のブランドを傘下に収める一大グループとして対峙したが、はるかに有利だと語った。
「到着ロビーのスクリーンを(LVMH傘下の高級時計ブランド、タグ・ホイヤーと)共有できる」と説明。「わが社にはこうしたシナジー効果があったし、ティファニーもそれを得て収益性が向上するだろう」と述べた。
「このブランド(ティファニー)は眠れる美女だった。LVMHの登場が目覚ましになる」とババン氏は言う。
<マーケティング攻勢か>
1837年創業のティファニーは、オードリー・ヘップバーンが主演した1961年の映画「ティファニーで朝食を」から世界的な名声を得た。そして今、フレッシュな広告攻勢をかければ新たな支えになるかもしれない。
アルノー氏の4人の子供の1人、アレクサンドル・アルノー氏(28)がティファニーの執行バイスプレジデントに就任し、商品とコミュニケーションを司る。同氏はニューヨークの8日の会合で、広告キャンペーンと若い顧客の獲得に力を入れる方針を示した。
アレクサンドル・アルノー氏は、LVMHによるスーツケースブランド、リモワの買収に助力。同社CEOだった当時は、ディオールとのコラボレーションでリモワのスーツケースをファッションショーに登場させ、流行最先端のイメージを築いた。
ティファニーの新CEOには、ヴィトン幹部だったアンソニー・レドル氏が就任し、アレクサンドル・アルノー氏と二人三脚で経営にあたる。
ティファニーの前CEO、アレッサンドロ・ボリオーロ氏はニューヨーク五番街にある旗艦店を数年かけて改装してきた。同氏の下で購入した80カラットを超えるオーバル・ダイヤモンドはネックレスにセットされ、同社で最も高価な宝飾品となる予定だ。
(Francesca Piscioneri記者、Silvia Aloisi記者、Sarah White記者)
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