韓国の仁川国際空港に駐機する大韓航空とアシアナ航空の機体(聯合=共同)
【ソウル=細川幸太郎】韓国航空首位の大韓航空が同2位のアシアナ航空を買収する。アシアナの経営再建を推進してきた政府系の韓国産業銀行が買収案を策定し16日に発表した。感染症で苦境が続く航空業界で政府主導の再編となる。
まず産業銀行が大韓航空の持ち株会社、韓進KALの第三者割当増資を引き受ける。大韓航空は増資で調達した資金を使ってアシアナの第三者割当増資を引き受け、同社を子会社化する。買収総額は1兆8千億ウォン(約1700億円)を見込む。最終的な出資比率や時期は今後詰める。
国際航空運送協会(IATA)によると、2018年の旅客キロ(旅客数と飛行距離のかけ算)は大韓航空が世界29位で、アシアナは41位。単純合算では15位に浮上し、22位の全日本空輸(ANA)や16位の香港キャセイパシフィック航空を上回る規模となる。
産業銀行はアシアナの債権団をとりまとめており、経営再建を19年春から主導してきた。新型コロナウイルスの感染拡大によって航空旅客が激減した際には政府の基幹産業安定基金を通じてアシアナとともに大韓航空にも資金支援した。買収が実現すれば航空産業を効率的に支援できるとの政府の思惑もある。
ただ大手2社への事実上の救済措置に、政府が参入を促してきた独立系の格安航空会社(LCC)からは反発の声もあがる。第三者割当増資は韓進KAL株の希薄化につながるため大株主の投資ファンドは「強い反対」を表明している。大手の統合で競争原理が働かずに消費者の不利益を招く可能性もあり、独禁法審査も焦点となる。
産業銀行やアシアナの親会社は19年12月、アシアナを国内建設大手に売却することで同社と合意を結んだものの、感染症拡大で20年9月に破談した経緯がある。産業銀行は他に選択肢はないとして大韓航空による買収を目指してきた。独禁法審査を巡ってはアジア通貨危機の際、経営破綻した国内自動車2位の起亜自動車を首位の現代自動車が買収した時のように公取委が特例的に早期に承認する可能性もある。
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