徹底した「ドコモ対抗」を打ち出してきたソフトバンク。LINEの名前を取り込んだ新たなオンライン専業ブランドも立ち上げる。壇上は、ソフトバンクの副社長執行役員兼COOの榛葉淳氏。
撮影:西田宗千佳
12月22日、ソフトバンクは、同社の携帯電話プランについて大幅な刷新を発表した。スタートは2021年2月から3月にかけて。NTTドコモが打ち出した「ahamo」「ギガホ プレミア」への対抗策と言える。
ソフトバンクとNTTドコモの新施策を見ると、1つの明確な共通項が見えてくる。それは「わかりやすさ」の訴求だ。安さが注目されがちだが、それだけが重要な点ではない。料金提示の仕方の変化に、今の携帯電話料金をめぐる「空気の変化」が現れている。
「オンライン専業」「中・低容量」「無制限」でブランドを使い分け
ソフトバンクの3つのブランドごとの戦略(価格と容量)の違いがわかるスライド。
撮影:西田宗千佳
ソフトバンクの新施策は3つのパートに分かれる。
1つ目は「SoftBank on LINE」という仮称で呼ばれている新ブランドだ。
撮影:西田宗千佳
価格は毎月20GBまで使えて月額2980円。オンラインで契約、オンラインでサポートするサービスで、安価さは「店舗を介さない」ことで担保されている。
言うまでもなく、明確にNTTドコモの「ahamo」を意識したプランと言える。従来から提供されていた「LINEモバイル」とは異なり、あくまでソフトバンクのインフラをそのまま使った「MNOとしてのプラン」であり、MVNOとしてのサービス提供ではない。LINEモバイルはこれからもサービスを続けるものの、3月以降、新規契約の受付は停止される。
2つ目はワイモバイルの「中容量・低価格」の攻勢。
容量と価格面ではワイモバイルの立ち位置が微妙に見えるが、店頭に訪れた人に「SoftBank on LINEと同価格で店頭でも案内できる」料金プランとして訴求できるとも言える。
撮影:西田宗千佳
そして最後が「大容量」戦略。ソフトバンクブランドでは、従来「メリハリプラン」として提供されていた月50GBまでのプランが、月額6580円に値下げされた上で、データ容量が「無制限」に変わる。
(ただし、無制限なのはスマホ内の通信のみで、PCでのテザリングや家族とのパケットシェアは最大月間30GBまで、という制限がある)。
「ブランド」を武器に大胆なシンプル化。読み解くのは3つの特徴
撮影:西田宗千佳
それぞれ、価格的にも以前より安くなっているのだが、もっと重要な点がある。「シンプル化されている」ということだ。これには3つの特徴がある。
1. どのサービスについても、4Gと5Gの契約の区別はなくなった
これは楽天も同様だが、料金プランの体系として、非常にシンプルだ。
2. 「ブランドで性質が異なる」戦略をとった
従来、ソフトバンクは、「ソフトバンク」ブランドの中に大容量と低価格のプランを持ち、それとは別にワイモバイルがあった。だが今回、「ソフトバンク」ブランドの低価格プランである「ミニフィット」は更新されなかった。
プランが廃止されたわけではないが、積極的な拡販は行われないと見られる。低価格プランは「ワイモバイル」ブランドと「SoftBank on LINE」が担当することになり、両者の違いは「店頭サポートと各種割引の有無」。迷う部分が減っているわけだ。
3つのブランド(ソフトバンク、SoftBank on LINE、ワイモバイル)は、「携帯電話のサービス」としてはあくまで別のもので、それぞれの移行にはMNPが必要になる。しかし、相互の移動について、手数料などは一切発生しない。これもシンプル化だ。
3. 「期間限定の割引」をなくした
従来あったような、半年限定、1年限定といった割引はなくなり、「家族割引」「光回線とのセット割引」など、契約すればずっと維持されるタイプの割引のみが存続する。
ただし、「SoftBank on LINE」には割引はない。割引内容についても、ワイモバイルでの割引は特に、「家族割も光回線割引も500円ずつ」とシンプルになっている。
「料金体系とサービスポリシーで簡単に選べる」これを徹底したことが、今回のソフトバンクの料金プランの特徴だ。
「期間割引にノー」という空気を読んだNTTドコモとソフトバンク
撮影:西田宗千佳
携帯電話料金の値下げについては、政府側から強い圧力があり、各社はそれに対応せざるを得ない状況に追い込まれている。
世の中では料金ばかりが注目されているが、今回の大きな潮流は、「料金体系を見通し、シンプルにする」ということだ。
発表会に登壇した、ソフトバンク代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの榛葉淳氏は、発表会でこう話した。
「過去には、まずはお試しとして、6カ月間、1年間、あるいは(サービスが)行き渡るまでの間、(期間を限定して)割引していたことがあった。ですが、今回はそういうものが一切ない」(榛葉氏)
つまり、期間限定割引によって少しでも安くなることよりも、最初から割り引いてシンプルで見通しの良いプランにすることを意識的に狙ったのだ。
ドコモも、12月18日に発表した「ギガホ プレミア」で料金のシンプル化を行った。ソフトバンク同様、「キャンペーン割引」も「キャンペーンによる無料サービス」もない。
家族割や光回線割引などを「使うか使わないか」で料金が変わる。さらに同社の場合、5Gのみだが、通信量は「PCでのテザリングを含め、全てが無制限」と、ソフトバンクよりさらにわかりやすい。一方、4Gと5Gで契約が分かれていることはマイナスだ。
KDDIの新年「打ち返し」のハードルは上がった
撮影:小林優多郎
今回、両社はなぜ「シンプル」を強調するのか?その背景には、12月8日にKDDIがauの新料金を発表した際に起きた「炎上」がある。
KDDIはahamoへの対抗策を発表したわけではないので、料金の高さ・安さで非難されるのは少し違うと思う。
だが、従来型の「期間限定」「バンドル」型のサービスであったため、「条件を積み重ねないと、プレスリリースに書かれている価格にならない」ことが消費者の反感を招いた。
KDDIにとってはタイミングが悪かった……と言ってしまえばそれまでなのが、「見通しの悪さ」に対する消費者の空気の変化を、KDDIが読み違え、それにNTTドコモとソフトバンクが即座に反応した……という見方もできるだろう。
従来、「シンプルさ」は差別化点であり、MVNOや楽天モバイルのような「新規参入者」の武器だった。
だが、行政からのプレッシャーもあり、大手が「シンプルさ」を身につけつつある。
結果的により寡占化が進む懸念はあるが、消費者として、シンプルになるのは確実にプラスとも言える。
では、ひとり「空気が読めなかった」KDDIはどうするのか?
各社のサービス開始は3月。まだ時間はあり、KDDIが年明けに対応策を発表するのはまず間違いないことだろう。
また、寡占に動きつつある市場の中で楽天は、MVNOはどうするのか? そうした部分も、春に向けてまだ波乱がありそうだ。
(文、撮影・西田宗千佳)
西田宗千佳:1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「ポケモンGOは終わらない」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)、「ネットフリックスの時代」(講談社現代新書)、「iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)がある。
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