ウイルスによるかつてない災厄に政治が翻弄(ほんろう)された1年。その前線で調整や情報発信を担った西村康稔経済再生相(58)とは、いったい何者か。
11月20日午前、西村氏の携帯電話がなった。「もう持ちませんよ」。相手は政府の分科会のメンバーのひとり。政府の観光支援策「Go To トラベル」の見直しを求める訴えだった。
その頃、新型コロナウイルスの国内の新たな感染者数が1日あたり2千人を突破し、さらなる増加が予想されていた。「第2波」とも呼ばれた夏の感染拡大時と違い、幅広い年代が患い、高齢者にも拡大。医療の逼迫(ひっぱく)は日に日に深刻になっていた。
「わかりました。総理に相談します」。そう応じた西村氏は同日昼、首相官邸の菅義偉首相(72)を訪ねメンバーの見解を伝えた。ただ、この時は首相への「進言」は聞き入れられなかった。
分科会と官邸の板挟みの末…遅れた判断
トラベル事業は、感染対策と経済の両立をめざす菅首相の肝いり事業だ。この2日前には日本医師会がトラベルについて「感染者急増のきっかけ」と警鐘をならしたが、政府は「感染を拡大させているエビデンス(証拠)がない」(官邸幹部)と取り合わなかった。分科会メンバーのメッセンジャー役を果たす西村氏には、官邸内から「最近、医者と同じようなことを言う」(幹部)などと、冷ややかな視線が向けられた。
ウイルスに翻弄された1年、政治の前線で情報発信を担った西村氏。前例のない困難な役回りとその言動は、周囲に摩擦も生んでいます。
だが、分科会側は引き下がらな…
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