全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は10月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による大幅な需要減少を受け、事業構造改革を発表した。このうち、コスト削減の一環でボーイング777型機など35機を今年度内に退役させる。小型機も、現在2機種ある737は737-700を退役させ、737-800に今後統一する。また、受領を先延ばししている総2階建ての超大型機エアバスA380型機の3号機(登録記号JA383A)や、来春受領予定の次世代大型機ボーイング777-9(777X)については、機体メーカーと受領延期の協議がまとまった。
改革案では、新型コロナで減少したビジネス需要は完全には戻らないとして、レジャーや親族訪問といった堅調な需要と、清潔さや非接触といった顧客ニーズの変化を踏まえ、事業改革を進める。機材については、9月末時点で54機ある777のうち、機齢が20年以上の経年機を中心に22機が退役。小型機についても、8機ある737-700(2クラス120席:プレミアムクラス8席、普通席112席)の退役を進め、737については737-800(2クラス166席:プレミアムクラス8席、普通席158席)に絞る。
今年度に退役する35機の内訳は、長距離国際線用の777-300ERが13機(年度当初計画はゼロ)でもっとも多く、国内線用大型機777-300が2機(同)、777-200/200ERが8機(当初計画は1機)、中型機の767-300/300ERが6機(同1機)、小型機の737-700が4機(同3機)、737-500が2機(6月までに退役済み)。35機のうち今回追加となったのは28機で、777-300ERと777-300は初の退役機が出る。
一方、ANAHD傘下のLCCのバニラエアがピーチ・アビエーション(APJ/MM)と統合前に運航していて、現在はANAが運航している1クラス180席仕様の3機のエアバスA320型機については、機体のリース期間が満了する2021年ごろまで運航を継続する。「32G」と呼ばれる座席配列で、ANAが運航するほかのA320よりも座席間隔が狭く、利用者からは不満の声も聞かれる。
新造機の導入については、今年4月に納入予定で半年延期していたA380の3号機の受領を、さらに1年程度遅らせる。長距離国際線に投入している777-300ERの後継機777-9(777X)も、2021年3月までに初受領を予定していたが計画を見直し、2年程度遅らせる。
27日に都内で会見したANAHDの片野坂真哉社長は、「航空機メーカーとは、受領の後ろ倒しでほぼ調整が済んできており、2年くらいの規模で順番に後ろ倒ししている」と説明した。大型機の受領延期や経年機の退役を中心とした対応により、9月末時点でグループ全体で297機ある機材を今年度末には33機削減し、整備コストも削減する。また、発注済み機材の受領延期に加え、前払い金の支払い先送りも実施し、海外へ委託していた航空機やエンジンなどの整備作業も内製化でコストを抑える。
旅客需要の回復については、「国内線は足もとが堅調で、2021年度末は100%に戻るのではないか。国際線は2023年度くらいまで長期化する」(片野坂社長)と、国際線の復調にはIATA(国際航空運送協会)の見通しと同程度の時間を要するとの見方を示した。
同日発表したANAHDの2020年4-9月期(21年3月期第2四半期)連結決算は、純損益が1884億7700万円の赤字(前年同期は567億8700万円の黒字)。売上高は前年同期比72.4%減の2918億3400万円、営業損益は2809億5000万円の赤字(同788億8000万円の黒字)、経常損益は2686億7100万円の赤字(同815億1500万円の黒字)だった。
2021年3月期の通期見通しも公表。純損益は2003年の連結決算移行後では最大となる5100億円の赤字(前期は276億5500万円の黒字)を見込み、売上高は前期比62.5%減の7400億円、営業損益は5050億円の赤字(同6608億600万円の黒字)、経常損益は5000億円の赤字(同593億5800万円の黒字)となる見通し。また、航空機の大量退役に伴う減損損失などが約730億円発生し、計1100億円の特別損失を計上する見込み。過去最大の最終赤字見通しを受け、片野坂社長は来期の黒字化に言及した。
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全日本空輸
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決算
・ANA、20年4-6月期最終赤字1088億円 新型コロナで国際線旅客96%減(20年7月30日)
・ANAの20年3月期、純利益75%減 1-3月期は588億円の最終赤字、新型コロナ打撃(20年4月29日)
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