国内の主な生命保険会社は2020年度下半期(10月-21年3月)の資産運用計画で、利回りが相対的に高い超長期物を中心に国内債券の残高を増やす方針だ。信用リスクの対価として高めの金利が得られる米国社債やオルタナティブ(代替)投資を増やす動きも見られる。
日本生命保険は下期に超長期国債の保有残高を約5000億円、通貨スワップを使って円金利化した海外社債や円建て社債もほぼ同額積み増す。明治安田生命保険は新規資金と債券の償還分を合わせた約3兆9000億円(通年)の約45%を円建て債などに投じる。第一生命保険と住友生命保険も国内債の残高を増やす方針だ。
明治安田生命の中野康一運用企画部長は記者説明会で「主な投資対象となる残存20年物や30年物の利回りは投資しやすい金利水準になってきた」と言い、国内債の超長期物に投資妙味が出ているとの見方を示した。
日本生命の岡本慎一執行役員財務企画部長は「ALM(資産と負債の総合的管理)運用の基本として長い資産と負債を一致させていく」と説明。第一生命の甲斐章文運用企画部長は国内債の金利水準が上がってくれば積み増しを加速することも考えると話した。
新型コロナウイルス禍で必要なさらなる景気対策に向けた国債発行増への懸念を背景に、日本国債の30年物利回りは年初来の高値圏で推移している。一方、米国債の10年物利回りは年初の半分以下の水準となっており、為替ヘッジコストを差し引くと国内の超長期債を大幅に下回っている。
このため、各社ともヘッジ外債投資ではソブリン債の残高を圧縮する一方、米国社債などの積み増しを図る。住友生命の藤村俊雄運用企画部長は、相対的に高い収益が見込める外貨建て事業債への投資を中心とすると説明。明治安田生命の中野氏は「シングルAからトリプルB格フラットの社債で利回りが得られる銘柄を選別して投資している」と述べた。
主要生保の資産運用には国内超長期金利が高止まっているのに加え、国際的に活動する保険グループへの資本規制が2025年に導入されることも影響している。長期・固定の国内保険契約に見合った円建て超長期債への需要が高まっているほか、運用効率向上のために長期的に高い収益が見込める海外オルタナティブ資産への取り組み強化につながっている。
かんぽ生命の春名貴之執行役運用企画部長は27日の記者向け電話会議で、オルタナティブは株価との比較も踏まえると「依然として投資妙味のある分野が存在しており、通常のペースプラスアルファで積み上げていく」と説明。第一生命はヘッジファンド投資でリスク分散を進める一方、プライベートエクイティは収益力向上を目的に強化していくという。日本生命と住友生命もオルタナ投資を進める方針だ。
【27日までに2020年度下期運用計画を明らかにした生保一覧、単位:億円】
単位:億円 | 国内債 | 外債 | ヘッジ外債 | オープン外債 | 国内株 | 外国株 |
オルタナティブ /新規成長 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
かんぽ | 減少 | 横ばい | 横ばい | 増加 | 横ばい | 増加 | |
日生 | 増加 | 横ばい | 減少 | 微減 | 増加 | ||
第一 | 増加 |
金利水準 次第 |
為替水準 次第 |
減少 |
株価水準 次第 |
オルタナティブ 増加 |
|
明安 | 増加 | 減少 |
ソブリン等は減少 クレジット物は増加 |
減少 | 減少 | ||
住友 | 増加 | 増加 | 減少 | 増加 | 増加 | 増加 | |
富国 | 横ばい | 100 | 横ばい | 100 | |||
太陽 | 増加 | 横ばい | 横ばい | 横ばい |
オルタナティブ 増加 |
||
大樹 | 減少 | 増加 | 横ばい | 増加 | |||
大同 | 増加 | 減少 | 減少 | 横ばい~増加 | 横ばい~増加 |
【2020年度の金融環境見通し一覧:()内は20年度末の水準】
国内金利 (%) |
米国金利 (%) |
日経平均 (円) |
ダウ (ドル) |
ドル円 (円) |
ユーロ円 (円) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
かんぽ |
▲0.20~0.20 (0.00) |
0.50%~1.20 (0.80) |
19000~25000 (23000) |
24000~30000 (28000) |
100~110 (104) |
115~130 (123) |
日生 |
▲0.20~0.20 (0.00) |
0.30~1.70 (1.00) |
17000~25000 (21000) |
20000~28000 (24000) |
100~120 (110) |
100~130 (120) |
第一 |
▲0.20~0.20 (0.00) |
0.00~1.50 (1.00) |
20000~27000 (25000) |
24000~32000 (30000) |
100~110 (106) |
115~135 (125) |
明安 |
▲0.15~0.15 (0.00) |
0.5~1.3 (0.8) |
19500~26000 (22000) |
23000~30500 (26000) |
101~110 (106) |
116~131 (126) |
住友 |
▲0.20~0.20 (0.00) |
0.40~1.30 (0.90) |
20000~27500 (23500) |
24000~30500 (28000) |
100~112 (108) |
115~135 (127) |
富国 | ▲0.30~0.20 (0.00) |
0.30~1.50 (0.80) |
18000~24000 (23000) |
22000~29000 (28000) |
95~115 (108) |
105~130 (120) |
太陽 |
▲0.10~0.10 (0.00) |
0.30~1.30 (1.00) |
19000~25000 (23000) |
21000~30000 (28000) |
100~110 (105) |
120~130 (124) |
大樹 |
▲0.10~0.10 (0.00) |
0.60~1.40 (1.00) |
20000~26000 (23000) |
24500~28500 (27000) |
101~111 (106) |
120~132 (126) |
大同 |
▲0.20~0.20 (0.05) |
0.5~1.1 (0.9) |
21500~25000 (24000) |
25000~30500 (29500) |
100~110 (104) |
119~130 (123) |
※日本生命、大樹生命は20年度末のレンジ(21年3月末中心)
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