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都心店の「富裕層つなぎ止め」がカギ 三越伊勢丹HDの課題と「明るい材料」 - ニフティニュース

三越伊勢丹ホールディングス(HD)の株価が2021年1月28日、一時前日終値比7.4%(47円)高の682円まで上昇した。前日に発表した20年4〜12月期連結決算は営業損益が148億円の赤字(前年同期は210億円の黒字)だったが、10〜12月期に限ると29億円の営業黒字を確保した。四半期ベースで1年ぶりの営業黒字だ。インバウンド(訪日外国人)需要が蒸発し売上高が低空飛行を続ける中でも利益を出したことを好感する投資家の買いを集めた。21年2月1日の終値は249円だった。

百貨店業界はコロナ禍前から小売り業の中でも成長力が疑問視されていた。そうした中で各社は不採算の郊外・地方店舗を閉鎖し、インバウンド対応を強化することで生き残りを図ってきた。そこへコロナが直撃。今となってはだいぶ昔の話にも思えるが、20年4〜5月に1回目の緊急事態宣言が出された際は「三越」「伊勢丹」はじめ各百貨店が休業や営業時間短縮の対応をとり、売上高が大きく減少した。

着実に減少幅を縮める

その後は日本人の百貨店での消費活動が徐々に回復。また、オンライン需要の取り込みも一部功を奏し、三越伊勢丹HDは「クリスマスケーキやおせち、福袋等のオンライン予約・販売が伸張した」としている。2021年1月に発令された2回目の緊急事態宣言のもとでも閉店時間を少し繰り上げる程度で済んでおり、少なくとも居酒屋や旅行業界ほどの打撃にはなっていない。

そのような状況のもとで三越伊勢丹HDが発表した20年10〜12月期連結決算。営業黒字になっただけでなく、経常損益で36億円、純利益で20億円とそれぞれ黒字を確保した。売上高は前年同期比10.5%減ったが、4〜6月期の53.3%減、7〜9月期の30.9%減よりは着実に減少幅を縮めている。

こうした決算内容を踏まえ、SMBC日興証券は1月27日発行のリポートで「(足元の市場全体の)株高を考慮すると緊急事態が明ければ富裕層の消費が強まる可能性があり、その際には短期的な株価回復は期待できよう」と指摘した。1月28日に三越伊勢丹HDの株価が急伸した際、決算内容と同時にこのリポートの内容も買いの材料になったようだ。

地方店の「健闘」

もっとも、リポートでは「(短期的な株価回復の)あとはコスト削減の持続性とともに利益水準をコロナ前にどれほど近づけられるかが注目点」とも記しており、当然ながら株価回復の持続性には条件を付した。

三越伊勢丹HDにとってもう一つ明るい材料を挙げるとすれば地方店の健闘かもしれない。地方店と言えばこれまで赤字で全体の足を引っ張っていたイメージだが今期はやや違う。2020年4〜12月期の各店舗の売上高を前年比でみると、都心の旗艦店と言える三越銀座店が47.7%、三越日本橋本店が71.3%、伊勢丹新宿本店が69.6%であるのに対し、広島三越83.1%、高松三越80.0%、静岡伊勢丹79.3%と軒並み地方が都心を上回っている。コロナ禍の影響が相対的に大都市より小さかったということだ。もちろん、利益を引っ張るというほどではないにしても足を引っ張ってはいまい。とすれば都心の店舗で富裕層をどうつなぎとめるか、が今後のカギを握ると言えそうだ。

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