政府は2050年までの温室効果ガス排出の実質ゼロに向け、22年度を目標に企業が排出量を取引できる新たな市場を創設する方向で調整に入った。削減目標を超えて排出量を減らした企業が、その分を目標達成できなかった企業に売却できる仕組みだ。削減目標や売却価格などを設定しやすいように政府が指針をつくり、官民で脱炭素に取り組む。
取引市場では、温室効果ガスの削減努力をした企業が対価を得られるため、さらなる削減への動機づけとなる。政府は、国内の温室効果ガスの9割以上を占める企業からの排出の削減につなげたい考えだ。経済産業省が夏までに新たな市場の概要を公表し、政府の成長戦略に盛り込む。
各国・地域で脱炭素の流れが強まっている。市場に参加する企業は自ら削減目標を設定し、目標が妥当かどうか、政府が「お墨付き」を与える。国際的なビジネス展開にもプラスになるとして、政府に新たな市場創設を求める声が高まっていた。
トヨタ自動車やソニーなど、日本でも大企業を中心に脱炭素に向けた戦略や気候変動への対策を開示する動きが広がっており、こうした大企業の新市場への参加を見込んでいる。
国内では、脱炭素の取り組みに積極的な企業などの削減量を政府が認証し、他の企業などに売却しやすくする「J―クレジット」という仕組みがあるが、利用が進んでいない。価格が企業同士の相対で決まることなどから、削減の取り組みが国内外から評価されにくいためだ。
海外では、欧州連合(EU)が05年から、域内の企業に対し、業種ごとに二酸化炭素(CO2)排出量の上限を定める「排出量取引制度」を導入している。排出枠を超過した企業は、排出枠を使い切らなかった企業から購入する必要がある。
ただ、EUでは市場に投資ファンドなどが参加し、取引価格の高騰を招いている。日本の新市場では、取引に参加できるのは自主的にCO2の削減目標を設定した企業に限る方向で、過度な価格変動が起こらないような仕組みも検討する。
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